地域の課題、データで解決 「地域ICTサミット2019」開催
総務省、日本経済新聞社、国際大学GLOCOMは3月8日、東京ビッグサイトで「地域ICTサミット2019」を開催した。総務省が実施した「ICT地域活性化大賞」の決勝大会も兼ねており、全国各地でIoTなど情報通信技術(ICT)を活用して地域課題の解決に取り組む団体がそれぞれの活動について発表した。
開会にあたって國重徹総務大臣政務官は「少子高齢化や人口減少が急速に進んでおり、地域の人手不足はますます深刻だ。ICTの有効活用で地域を維持・発展させる成功モデルの確立と全国展開は急務」とあいさつした。
『アプリで活性化し続けるまち、鯖江』と題し講演したのは、地域におけるオープンデータ活用をいち早く提言したjig.jpの福野泰介会長。福井県鯖江市を舞台にした様々な取り組みは、地域情報化の先進事例として広く知られている。市は保有するデータをシステム的に利用できる形で公開し、企業や市民がそれを活用したアプリを制作する、という体制で身近な地域課題解決を進めてきた。
近年、福野氏は教育分野に力を入れているという。子供向けの安価な簡易型コンピューター「IchigoJam」を使い、プログラミング教室や学校でのプログラミング授業などを展開している。「課題に対し、アイデアやアプリ、データで解決していくことでイノベーションにつながる。しかし、現状ではアプリを作れる人材が少ない」からだ。
「子供たちは知識よりもまず体験。まずやってみて、楽しさを感じてもらうことが大切」と指摘する福野氏。立ち上げた「プログラミングクラブネットワーク(PCN)」は全国に広がり「こどもプログラミングコンテスト」などを実施している。
「ICT地域活性化大賞」の決勝大会では、ファイナリスト11団体がプレゼンテーションしたのち、審査員の討議と、会場の受講者による投票で各賞が決まった。
大賞(総務大臣賞)を受賞したのは、北海道新篠津村で始まった「IoTを活用した農山漁村の灯油難民防止」の取り組み。北海道での暮らしに、灯油は欠かせない。しかしその配送が、少子高齢化による人手不足で滞ることが懸念されており、いずれ「灯油難民」とも言うべきエネルギー弱者が生まれるのを防ごう、という事業だ。北海道石狩振興局、新篠津村、JA新しのつ、ゼロスペック、京セラCS、さくらインターネットが共同で手掛けた官民連携モデルである。
燃料タンクのキャップにセンサーを仕込み、灯油残量を通信で送る。その集計データに基づき、効率的な灯油配送を計画する。2017年12月から2018年5月までの半年間、153戸を対象に行った実証実験では、メーター設置費用などの経費を差し引いても30万円以上の人件費削減効果が認められた。これを受け、すでに道内5都市、数千戸の規模で商用サービスとして展開されている。
審査員を務めた日本経済新聞社の関口和一編集委員は「今年は課題解決型、地に足のついた取り組みが多かった。またデータ活用を前面に押し出してきた事例が多かったのも特徴」と講評した。
受賞団体の紹介(総務省ウェブサイトにリンクします)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000206.html