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【セミナーレポート】スタートアップ・後継ぎベンチャーと企業をつなぐ スタ★アトピッチ関西
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スタートアップ・後継ぎベンチャーと企業をつなぐ
スタ★アトピッチ関西 実施レポート
新進気鋭の経営者が新しいビジネスモデルや商品・サービスをピッチ形式(短時間のプレゼンテーション)で発表する、「スタ★アトピッチ関西」が3月5日(火)に大阪・梅田のグランフロント大阪 ナレッジシアターで開催されました。
登壇企業はスタートアップ15社、アトツギ(後継ぎ)10社の計25社。わずか1社4分の短いプレゼン時間に、会社の事業内容やこれからの展望、事業提携、資金提供などを参加している企業や担当者にいかにアピールできるか、25社の熱いプレゼンに期待が高まります。
司会進行を務める地元FM802のDJ、飯室大吾氏と内田絢子さんが舞台に設置されたタイム表示と拍手の音量測定のための電光板を紹介。4分になると終了のゴングを鳴らすことや、ピッチ終了後にコメンテーターから様々な質問があることなどを説明しました。
オープニングでは25社の登壇企業が舞台に勢ぞろいした後、神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科の忽那(くつな)憲治教授が「地方創生のカギを握る『スタートアップとベンチャー型事業承継』」と題し基調講演。同教授はスタートアップ企業と後継ぎ企業(ファミリービジネス)が一堂に会し、ピッチ形式でプレゼンするこのイベントを高く評価した上で、人口減少、少子高齢化社会にあって、どの企業もしっかりしたビジョンを持つとともに、到達地点や競争優位性などを明確にすることが事業戦略の重要な要素だと話しました。若い経営者にはアントレプレナーシップ(企業家精神)を高めて、新規事業に前向きにチャレンジしてほしいと期待を寄せました。
各登壇者によるピッチが始まると、ユニークな衣装やパフォーマンスに会場が盛り上がったり、コメンテーターから厳しい指摘が出ることもありましたが、25のピッチは順調に進んでいきました。
最新のAI(人工知能)を使い、「創造型AIであるクリエイティブAIの研究開発――アイドル自動生成AIの狙いとその展望――」を発表したデータグリッドは京都大学に拠点を置く大学発ベンチャー企業。画面ではAIにより自動生成された架空のアイドルが次々に登場し、顔や全身、動きも無限に生成できる画期的な技術を披露し、会場から大きなため息がもれました。ほかにキャラクター自動生成AIや医療データ自動生成AIなども開発しています。現在、リアルなバーチャルヒューマンの自動生成を研究中で、今春には自分だけのアイドルが作れるゲームも発売予定という。
ひときわ大きな拍手が響いたのは実家の大阪のブドウ園を引き継いだ4代目の後継ぎ、「葡萄のかねおく」の奥野成樹さんのプレゼン。テーマは「ともに創り出す新しい果樹農業。体験型オーナー制ぶどう園――オクナリー」。農業従事者が高齢化で引退していく現状に危機感を抱き、若者もできる画期的な都市型果樹農業のビジネスプランを策定。これは自分が気に入ったぶどうの木のオーナーとなり、そのオーナーから年会費と労働力(ブドウ栽培に従事)をもらい、オリジナルワインなど様々な特典をつけるというもの。新発想の体験型オーナー制が話題を呼び、多くのメディアに取り上げられました。
アトツギ企業で審査員から絶賛されたのが鈴木法衣店。真言・天台宗各派の法衣と袈裟(けさ)の製造販売を手掛ける100年企業ですが、信者数は年々減少し、販売先の僧侶もお布施が少なく法衣を気軽に買い替えられない状況が続いていました。大手銀行から家業の法衣店に入社した鈴木貴央さんは、僧侶の費用負担をできるだけ軽減し、クリーニング不要でいつでもきれいな法衣を提供できる僧侶向け会員制サービス「ホウルイ」を考案。月額1万円、1万5千円、3万円のコースを作り、それに応じた法衣や作務衣などの衣類をレンタルするというものです。これからは全国で約33万人いる僧侶向けにECサイトやカタログなどを通してマーケットを広げ、僧侶が抱える“不”を解消していきたいと熱のこもるピッチが展開されました。
会場のホワイエでは各登壇企業のPRコーナーが設けられ、カテゴリーごとのピッチ終了後には登壇者も加わり、多くの参加者でにぎわっていました。名刺交換もあちこちで行われ、商品やサービスのより詳しい内容を聞こうと列を作るコーナーもあり、関心の高さがうかがえました。
全てのピッチが終了後、各コメンテーターから全体の感想や印象に残った企業についての寸評が述べられ、登壇者25人全員が再び舞台に整列。引き続き表彰式に移りました。まず協賛社のタナベ経営から「FCCスタートアップ賞」はデータグリッドの岡田侑貴社長が受賞。特別協賛の同社の若松孝彦社長からクリスタル製の盾(たて)が授与されました。続いて「FCCアトツギベンチャー賞」は鈴木法衣店の鈴木貴央さんが受賞し、同じく若松社長から盾が授与されました。
さらにもう1つの特別協賛、野村證券の山本泰正ソリューション・アンド・サポート部長から「野村ホールディングス賞」が鈴木法衣店に授与されました。ダブル受賞となった同社の鈴木貴央さんは「法衣というほとんどの人が知らない世界にもビジネスソースがあり、われわれのような若い世代が頑張っていることを知ってもらえるチャンスをいただき、感謝しています」と感想を述べました。
最後の賞は客席の拍手が最も大きかったピッチに授与される「オーディエンス賞」。神戸大学の忽那教授から発表されたのは「葡萄のかねおく」の奥野成樹代表でした。
このスタ★アトピッチ関西を機に、スタートアップとアトツギ企業が、大企業との事業提携や販路拡大、資金支援など、具体的な成果が生まれ、地方創生の起爆剤となることを期待しています。